クリスマスソングなんて

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 会計を済ませたオーナメントがたくさん入った紙袋を、冬吾さんが受け取る。 「持ちます」 「はい」  紙袋の代わりに冬吾さんは自分の手を差し出した。 「こっちを持っていてくれるほうがいいな」  そっと手を重ねられた手が、またポケットの中に滑り込む。お店の中にいたからか、少しだけ体温の上がった指が絡み合う。 「冬吾さんはなにも買わなくていいんですか? さっき見ていたのとか」 「ああ……、あれは別に飾りたかったわけじゃないから」  なぜか冬吾さんは少しだけ照れたような顔をした。  見ていたのは、針葉樹やヒペリカムなどのフレッシュグリーンでできたボールだったんだけど、なにか特別なものだったのかな。 「どこに飾るものなんですか?」 「一度も見たことなかった?」 「多分……」 「軒下とか玄関とか、まあどこでもいいんだけど、上から吊るすんだよ。本来はヤドリギで作るんだけど、今は色んなデザインのものがあるんだなと思って」  飾りたかったわけじゃないと言いながらも、なんとなく冬吾さんは名残惜しそうな表情をしている。 「せっかくなら、買って飾りませんか?」 「……キッシングボールって言って、あの下でキスをすると、永遠に結ばれるんだって絵莉さんが言っていたんだ。試してみる? 問題は吊るすところなんだよね。室内だとシンがいるし、外には人がいるから。僕としては、花名がいいなら大賛成だけど」  冬吾さんは立ち止まって私の顎に指をあてると、唇を見つめた。その視線が熱っぽく感じて、私は思わず視線を下に向けてしまった。 「やめて……おきます」 「だよね。残念だなと思って見ていただけだから気にしないで。そろそろ帰らないとな」  顎から指を離すと、冬吾さんはギュッとポケットの中で手を握ったまま歩き出す。なんとなくその表情が寂しそうに見えて、私は勇気を出して自分から腕を組んでみた。 「いいの?」 「……クリスマスですから」 「じゃあ、もう一つだけ許して」  冬吾さんはそう言って、頬に触れるだけのキスをする。 「クリスマスに浮かれて、クリスマスソングを聴きたくなる気持ちが少しはわかったような気がするよ。ホットアップルサイダーでも飲みながら帰ろうか」 「はい!」 「キスしてもいいって訊いても、そのくらい前のめりに返事をしてくれる?」 「ダメですよ。人がたくさんいますから」  冬吾さんは肩を竦めて残念そうな顔をしてから、「だろうね」とクスッと笑う。  ふたりで歩いていると、耳に入ってくるクリスマスソングも、いつもと違って聴こえてくるような気がした。 クリスマスソングなんて Fin
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