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わたしに気づいた彼はゆっくり体を起こした。
そんな新に、わたしは持っていた二つの鞄のうちの一つを軽く上げる。
「はい、鞄持ってきたよ。帰ろう?」
「ああ……いつも悪いな」
形の良い眉尻を下げて謝る新に、わたしは「気にしないで」と返す。
それでも申し訳なさそうにする彼に、本当に気にしないでほしいと思った。
新はわたしに迷惑をかけてると思っているみたいだけれど、わたしはむしろ嬉しいんだから。
好きな人と一緒にいられるんだもん。
嫌なわけない。
ベッドから下りて上履きを履いた新に鞄を渡す。
「すぐ帰れる? まだふらつくならもうちょっといようか?」
「大丈夫だけど……寝起きだから念のため10分くらい待って」
「うん、分かった」
快く返事をすると、わたしは新の隣に座った。
初めの頃は遠慮して立っていたけど、そうすると新が無理してでも帰ろうとするから座って待つようになったんだ。
こうしてすぐ隣に座って、距離が近くなるのも嬉しくてドキドキする。
この時間だけは新を独り占め出来るから。
でも、そんな風に思ったら新に悪いかな?
新はこうしてよく倒れるようになってから、落ち込みやすくなったから。
「……はぁ、いつもながらホント情けねぇ」
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