いつもの保健室

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 ただの幼馴染でしかないわたしと二人きりになんて、いつもなら絶対にならない。  だから、新には悪いなって思いつつもこのオレンジ色に染まった保健室のひと時が大事な時間になっているんだ。  家に帰るまでは一緒にいるけれど、本当の意味で二人きりなのは今のこの時間、この保健室にいる間だけ。  だから願ってしまった。  もっと今が続けばいいのにって……。  先に歩いていた新がドアを開ける。  保健室と廊下の境界線をまたいで出て行くのを見て、二人きりの時間はおしまいか……と残念に思う。  それでも帰らないわけにはいかないから、わたしもその境界線を越えた。  異変は、そのとき起こった。 「え?」  突然目の前が(かすみ)がかったように白くなって、何度も瞬きをして最後にギュッと目をつむる。  でも、その目を開いたときにはいつもと変わりのない学校の廊下が目の前にあった。  さっきも見た四角いオレンジの光が、等間隔で廊下の床や壁に映っている。  ひと気の少ない放課後の廊下。  何もかもがさっき見た光景と変わりない。  変わらな過ぎて、逆におかしい。  だって、目の前にあったはずの新の背中が消えているんだもの……。
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