僕たちはクリスマスができない

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「ダツは魚だよ、ほら」  僕はスマートフォンを開き、細長い魚、ダツの写真を見せてあげた。 「泳いでいるときに光り物を目にすると飛び込んでくるんだ。時速60キロとからしい。ダツごっこの練習でもする?」   僕が両手を広げてダツ笹野を迎える準備をしたのに、一向に来てくれない。 「残念だな。今度は光り物を用意しておくよ」 「私寒いからもう帰る。明日は用事があるし」  さっき公園に着いたばかりなのに、むくれた笹野さんが立ち上がろうとしたから、僕はサッと手を掴んだ。 「さっきないって言っていたよ。まだジュール誕生祭の全貌を話していないから、全部聞いてから判断してよ」  笹野さんの浮いたままだったお尻が、ベンチの上に戻ってくる。 「ダツごっこをしたあとは、チキンを食べて、イルミネーションでも見に行って、ジュールの誕生を祝おうよ」 「いいかも」とものすごく小さな声で笹野さんは呟いた。 「よく考えちゃうとただのLED電球の集合体だけど、光り物の隣に並んだら笹野さんが飛び込んできてくれるかもしれないし、悪くないかなって。で、24日は笹野さんにとってはなんの日だった? もし、ジュールの誕生を祝う以外にしたいことがあれば計画に入れてもいいけど」  答えたくないらしい。プイと笹野さんは横を向いてしまった。
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