僕たちはクリスマスができない

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「笹野さん、明日の話なんだけどさ」  笹野さんがまだ話の途中なのに嬉しそうに頬を緩めたから、僕はついからかいたくなってしまう。彼女を翻弄して生きるのが、僕の人生において最大の楽しみなのだ。  今日は12月にしては暖かい。このくらいならベンチで喋っていても風邪は引かなさそうだ。 「一緒に誕生祭をしない?」 「誰の誕生日?」  笹野さんには、腹を空かせてつい餌に食らいついてしまう魚のような反応を期待しているのに、釣り堀の魚のように慎重な姿勢で聞き返してくる。 「12月24日にお祝いする人なんて言ったら決まっているよね。笹野さんと一緒に過ごせるの楽しみだったんだ」  若干警戒を緩めたのか、釣り堀の魚は眉間の皺を減らした。しめしめ。 「予定は空いているけど……」 「OK。じゃあ決まり。一緒にジュールの誕生日を祝いに科学館にでも行こうか」 「誰なのそれ。なんで科学館なの」  文句のように質問し、むうと笹野さんは口をとがらせる。
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