僕たちはクリスマスができない

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「どうしたの。そんなに口をとがらせていると、ダツみたいになっちゃってさ、飛び込んきたときに刺さって僕の胸に穴が空くかもしれない。いやでも笹野さんが飛び込んできてくれるなら、それで死ぬのも悪くないかもしれないね。笹野さんはどう思う? 僕の胸に飛び込みたい?」  笹野さんは唇を巻き込んで固く結んでしまった。 とがらせているとか、ダツだと言われたのが嫌だったという可能性もゼロじゃないだろうけど、無表情なところを見ると、飛び込みたかったんだろう。 「笹野さんもジェームズ・プレスコット・ジュールとは、中学のころに出会っているよ。ジュールの法則って聞いたことがあるでしょ。電気抵抗、電流、熱の関係を発見した人だよ」 「そんなことよりも。ねえ、どうして私が森緒くんとジュールの誕生日なんてお祝いしないといけないの」  そんな片付けられ方をしてしまうジュールが少々可哀想だけど、これだけムスッとしているところを見ると、笹野さんは相当クリスマスを楽しみにしていたようだ。かわいい人だな、本当に。 「僕の部屋には電気ストーブがあって、毎年お世話になっているんだ。そのお礼も兼ねて、ジュールの誕生日を祝おうかと思って。暖かい部屋の中でダツごっこでもしようよ。ダツの役は笹野さんね。きなこも参加するかもしれないけど。動くものが好きだから」 「もう、ダツってなんなの!」  笹野さんの頬が膨らみ始めているから、そろそろ潮時かな。
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