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お迎え
「楽しかったなあ……」
玄関で迎えを待ちながら、沈んで行く夕日を眺めていると、自然とそんな言葉が出ていた。隣で誰かがクスッと笑った。
「ありがとうございました~」
迎えに来た娘があれ、と何かに気付いたような顔をした。
「何、お父さん、良いことあったの?」
図星だった。
俺が何も言わずにいると、「今日すごく面白かったです」と、横から声がした。
「あ~なるほどね、だからそんな感じなんだあ」と、娘はニヤニヤしながら言う。
「何だよ、そんな感じって」
「だって、劇場でウケた日と同じ顔してるよ?ウケたの?」
恥ずかしい。でも、まあいい。すぐに忘れる。
誰かが笑えばそれでいい。
「……忘れた」
「やっぱりボケてんじゃん」
「うるさい、いいかげんにしろ」
俺のツッコミで二人が笑う。
次にここに来る時まで、この気持ちを覚えていられるだろうか。わからないがとりあえず今日は、帰ろう。
「どうも、ありがとうございました」
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