特別に生まれ、特別に朽ちる

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 ーー今日は特別な日だ。  道に外れた人間は、道を順当に進んでいる者の悪意に耐えなければならない。抵抗せず叩かれ続けなければならない。  鉄が叩けば形を変えて強くなるように、人の心も叩くほどに強度を増す。人生の道からずれた者は、こうして何度も叩かれ続け、己の心を鍛え上げ、強くなっていくしかない。そうしなければ、この世界では生きていけないのだ。  ーー今日は特別な日だ。    ただし、そうやって強くなるものもいれば、叩けれて凹み続け、弱さに負けてしまう者もいる。その結果、己の人生を終わらせる選択を取り、実行する決断を下す者もいるのだ。  それを実行し、命を終わらせる。  すると、残された者は口々に嘆き悲しむ。 「何故そんなことをしたのか」「生きていればいいこともあったのに」「辛いなら言ってくれれば」  同音異義に、そんなことを言う。  だが、その決断は間違っているのだろうか。  命を失う行為を実行するまで、何度も躊躇し、考え直したことだろう。そのたびに、やはりこの世界に生きていく価値など無いと、そう何度も結論を出したのだ。だからこそ、そうして決断した。人生の道を順当に歩んだ成功者には、理解できないだろう。
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