特別に生まれ、特別に朽ちる

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 ーー今日は特別な日だ。  だからこそ、今、こうして首に縄を括り付け、踏み台に乗っているのだ。  今日は誕生日。そして、命日になる。  生まれたことに祝福され、期待されたが、実際のところ自分の意思ではない。勝手に生まれ落とされ、勝手に人生を歩ませられ、勝手に失望された。  ならば、命を絶つ時くらいは自身の意思で決めても文句を言われる筋合いは無い。  実際、あと数歩で自らの生を終わらせるのに、何の後悔も未練もない。唯一あるとすれば、早く実行していれば良かったということだけだ。  途中で抜け落ちないよう、改めて強度を確認する。縄は充分張っている。これなら大丈夫そうだ。  ふと、自ら命を絶つと、魂が天国に行けずに地縛霊となり、ずっと同じ行為を繰り返すことになる、という説を思い出した。  実際のところ、やってみなければ分からない。死後どうなるのか、最後の最後に楽しみが増えた。 「……ふっ」  思わず笑みが零れる。  そうして、楽しい気分のまま。  踏み台から飛び降りた。  ーーーー  ーー  ー
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