先輩と先輩 2

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 イベント会場から少し歩いたところにある飲み屋街に俺たちは向かった。焼鳥屋の炭火の匂い、飲み屋街特有の喧騒が食欲を掻き立てる。 「何にします? 」  春崎先輩に聞くと、「実はもう予約してるんだよね~」とニコニコしながら返された。一体いつの間に。さすが今回の企画を発案から実行に移した人物だ。幹事力が半端ない。 「本当に抜け目がないな」  隣を歩く先輩が呟く。しばらく進むと、飲み屋街の一角、牛の絵が描かれた赤い提灯が軒先にぶら下がる店を春崎先輩が指差す。 「あのお店だよ! この辺じゃ知る人ぞ知る焼肉屋さんなんだ」  楽しみにしていたのだろう、春埼先輩の足取りが軽い。店に近づくにつれ、換気扇から出る焼肉屋の匂いが強くなる。足取りが軽くなるのも頷けた。  店に入り、春埼春先輩がスタッフに予約していた旨を告げると、角部屋の個室に案内された。 「焼肉屋なのに個室なんですね」 「人目を気にせずにいっぱい飲めるしね! ね? 懍ちゃん」  春埼先輩が氷雨先輩に向かって言う。先輩は何故か目を逸らした。
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