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 クリスマスを、特別な日と思えなくなったのはいつからだろう。  「もうサンタは来ないよ」と言われた中学生の頃からだろうか。いや、それでも学生の間は、クリスマスはケーキを食べて何かしらのプレゼントを貰える日だった。  恋人がいた時には一緒に過ごしたりして、一応『特別な日』ではあった。彼氏と別れてからは、クリスマスは平凡な1日に変容した。  その感覚がさらに加速したのは、働きだしてからだろうか。クリスマスはなんの変哲もない1日になった。普段と変わりない、月末の近づくそれなりに忙しい日。25日は給料日。そんな認識しかしなくなった。 「ありがとうございました」  楽しそうな家族に頭を下げて見送る。私の働いているチェーン店のレストランでは、クリスマスディナーを豪華に、そしてそれなりに安価に済ませようという人々が多く訪れていた。  やはり多いのは親子連れ。子供は皆一様に『特別な日』にはしゃぎ、「うるさいよ」と叱る親ですらどこか幸せそうである。  おそらく私には、決して手に入らない光景。結婚したいわけでも、子供が欲しいわけでも、恋人が欲しいわけでもないが、少し羨ましかった。幸せが、羨ましかった。
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