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ごはんとごはん
やってしまったと気づいた時は、昼食の最中でわたしの机にはごはんが3つ並べてある。1つは間違いなくわたしのごはんで大好きなたまごふりかけが、かかっている。
「ごはん3つにおかずの数が合わないんじゃない?」
「いやぁ、これはですね」
蓋を閉めながら、どっちが高級ごはんだったかを悩むわたし。同じ白いごはんでも見分けられたらいいのだけど、同じ容器で同じ色のお弁当箱を仲良く使っている2人。
「うそぉ、誰か月城に、ごはん恵んでやって!!」
騒ぐよね騒ぐよね。1組でモテている男子のお弁当がおかずだけだもん。目の前の友人が前方を見て小さなため息を吐く。
「高級おかずだけでいいじゃない。ねぇ鈴音」
彼のおかずは大変で、高級たまごと昆布出汁で作った厚焼きたまごに、全国で数軒しかいない鶏舎さんから取り寄せた鶏モモをつかい、高級油で揚げた唐揚げが入り、きゅうりも上質なもので塩漬けしている。プチトマトは糖度甘め。
「ですよね。くるみさんお先にお召し上がりください。わたしは・・」
話題の月城さんは男女問わずキュン死する笑みのまま椅子を引き、前方からこちらへと向かって来る。斜め後ろの席に座っている男子は舌打ちしながら、同じく椅子を引くが音が大きい。
「ヤバ、東雲まで同じなの?」
縦ロールのツインテールを揺らしてなんだか楽しそうなくるみさん。彼女が『ヤバ』と呟くのは、1組の中で悪い噂に彼がいるから。眉が薄く目つきがよろしくない彼は、ハリネズミのような髪を金髪に染めている。
「小鳥居さん、ごはん取りにきたよ」
「何回間違えるんだよ!!小鳥」
クラスメートの視線を浴びてしまいます。1組のモテ男と悪に絡まれた可哀想なわたしは、慣れない笑顔を作ってその場を乗り切ろうとしている。
「え、え!!え〜」
バタバタと蹴らないでくれます?机が激しく揺れているので。
「どういう関係なのよ!!鈴音」
くるみさん頬を赤らめて、お箸ケースをマイクのようにわたしに差し出す。
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