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「あー、いたいた。清水?」
別の車両から乗り込んできたのだろう。肉まんを食べながら泣いている俺を、相方が不思議そうに見ている。
「……お前のぶん」
紙袋を差し出せば、俺の隣に座り、同じように肉まんにかぶりついて「旨いな」と言った。
「真太郎。俺、忘れもの取り戻せた気がする」
去年、俺が忘れたもの。この一年ずっと忘れていたもの。
「また来年、頑張ろうな」
そう言うと、真太郎は目をぱちくりと見開いて笑い、そして、泣いた。
去年の俺たちは、きっとあの彼女にとってはナンバーワンでオンリーワンだったはずだ。たったの一夜。たったの四分。俺が知らなかっただけでミラクルは起こっていたし、少なくとも彼女の人生は変わっただろう。
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