忘れものを忘れていた。

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 だけど、それを言ったところで困ったように笑うだけだということも知っている。わかってる。悔しくないはずがない。でも、どんなに悔しがって地団駄を踏んだところで、結果は覆らないのだ。だから相方は無駄に感情を露にしない。そんなことより、敗者復活戦に向けてネタを詰めたほうがよほど合理的だと、相方は思っているのだろう。 「ネタ、どうする?」  仕方なく聞いてみる。 「そりゃまあ、出順にもよるけど勝たなきゃ意味がないから、一番自信のあるネタを掛けるしかないでしょ」 「……だな」  つまり決勝用に取っておいたネタで勝負しようということだ。  敗者復活戦は一週間後。野外の競馬場で行われるそれは、毎年やたらと寒い。去年はストレートで決勝に行けたが、前の年までは何度か俺たちはあの野外ステージにいた。  ああ、最悪だ。  今ごろになって思う。  真面目に最悪だ。  去年優勝していれば、こんなことにはならなかったのに。
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