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午後6時半。
ついに漫才頂上決戦がはじまった。
ステージに設置された巨大スクリーンにテレビ放送が映しだされ、会場がわっと盛り上がる。俺たちはステージ上で寒さに震えながら、その時を今か今かと待っていた。
ちらほらと雪が降りだし、吐く息はうんざりするほど白い。ネックウォーマーを口もとまで引き上げて、心の中、大丈夫だと繰り返す。トップにしてはいい出来だったと思う。会場の反応も悪くなかった。望みがないわけじゃない。
『さあ。封筒が届きました!』
司会を務めるベテラン芸人が白い封筒を片手に、興奮した様子で告げる。おおーっ、と会場からどよめきが起こり、みな自分が推しているコンビが勝ち抜けるようにと両手を握りあわせ祈っている。
敗者復活戦は会場にいる客と審査員の投票によって決まるシステムだ。客からの投票は1点、審査員からの投票は10点。
『それでは発表します。敗者復活戦を制し、残る一枠を手にいれたのは──』
ドラムロールが鳴り響く。
『エントリーナンバー2766、なつやすみ!』
ワッと会場が沸き、後ろのほうで控えていたコンビが前へと押し出される。信じられない、そんな顔をして、足をもつれさせながら前へと出てきたコンビは、まだ結成三年の超新星だった。
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