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「あの……」
後ろから声をかけられ、くるりと振り向く。目の前には20代半ばほどの女性。きっと俺は怖い顔をしている。振り向いた俺の顔を見て、彼女が一瞬びくっとしたからだ。
「お疲れのところ、すみません。あの、もし良かったらこれ」
これと彼女が差し出してきたのは、白い紙袋だった。薄いその紙袋の中身は、肉まんかあんまんだろう。見知らぬファンから食べ物を受けとるのはどうかと迷っていると、慌てたように彼女が付け足してきた。
「今そこで買ったものなので大丈夫です。別になにも変なものとかいれてないですし……」
「……ありがとう」
食べずに捨てればいいか。そう思っていた。手にした袋はほんのりとあたたかく、彼女の言うことが嘘ではないことを示している。
「あの……ええと、ありがとうございました!」
「え?」
いきなりガバッと頭をさげられ、何事かと戸惑う。
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