夢見る俺たちのクリスマス

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「んっ……ふっ……ぅ」  角度を変えて唇を合わせるたびに、唾液に混じった涙の塩気がじわりと味蕾を刺激する。  本能のまま貪る俺の動きに追いつこうと必死に喘ぎながら、神崎は泣きじゃくっていた。 「大丈夫?」  久しぶりに離れた距離を埋めるように覗きこむと、神崎はこくんと頷き、びしょ濡れの顔で微笑む。 「夢、みたいで……嬉しくて」  待ちに待った12月24日ーークリスマス・イブ。  約束通り暗くなる頃に神崎を迎えに行って、二人で俺の家へと帰ってきた。  玄関の扉を開くなり寒さに震える神崎を引き寄せて、溢れて止まない思いを直接耳に注ぎ込んだ。  春の訪れを知った蕾が花開くように可愛い笑顔が広がるのを見届け、唇を押しつけた。  崩れ落ちそうになる身体を無理やり抱え上げ、サラサラの黒髪を鷲掴みにして逃げ道を塞ぎ、熱い口内を舐め回した。  ケツの青い子供も真っ青になってしまいそうなくらい、自分本位で未熟なキス。 「ごめん、我慢できなかった」 「えっ……」 「神崎があまりに可愛かったから」 「かっ……!」  上気していた神崎の頬が、さらに沸騰して真っ赤になる。  神崎は「あ」とか「う」とか呻いてから、俺の制服の袖を引っ張った。 「せ、先輩」 「ん?」 「その、ク、クリスマス、プレゼント……」 「あ、もう開ける? 神崎なら先にケーキって言うかと思ってたけど」 「ち、違います! そうじゃなくて……」  モゴモゴと語尾を濁した神崎は、制服のポケットに手を入れた。  取り出したのは……青いリボン?  俺から目を逸らしたまま、神崎はなぜかリボンをシュルリと自分の首に巻き付ける。  そして器用に蝶々結びを作ると、まるで捨て犬のように揺れる瞳で、俺を見上げた。 「クリスマス・プレゼントは俺、です」 「……は?」 「も、もらってください」  ーー準備、してきたから。  頭が、くらくらした。  もちろん、ここで「準備ってなんの?」なんて聞くほど俺は愚かではない。  神崎が〝準備〟する光景なんて簡単に想像できるし、たったそれだけで、俺のあそこは元気ビンビンになっちゃったりしている。  そう、問題は『何』じゃなくて、『どこ』なのだ。  まさか、部室のシャワーであんなとこやこんなとこに指を突っ込んだりしたっていうのか? 「……はあ」  ああ、頭痛が痛い……じゃなくて、頭が痛い。  いったいどこで覚えてきたんだ、こんな煽り方。 「告白もまだだったのに、期待、しちゃったの?」 「だ、だって! 百合ちゃん先輩が、佐藤先輩が一番喜ぶプレゼントはコレだ、って言ってたから……!」 「百合ちゃんが……?」  なんてことだ。  正直、百合ちゃんには感謝感謝の大感謝祭だけど、彼女の言葉を真に受けて、しっかりきっかり言われた通りにしちゃうこの子の将来がものすごく心配だ……! 「ああ、もう」  今ここで、抱きしめる以外の選択肢があったら教えてほしい。 「どうなっても知らないよ?」 「いいです、どうなっても。抱きしめてくれるのが、佐藤先輩なら……」    きゅうっと力のこもった手が、俺の背中をくしゃくしゃにする。  同時に心臓も鷲掴みにされ、俺はうっかり泣きそうになってしまった。  思い、思われることが、こんなにも嬉しくて、幸せなことだたったなんて。  「理人」 「先輩……」 「好きだよ」 「俺も好きです……英瑠先輩」  そして俺たちは、ひとつになったーー
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