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「二人とも大きくなって……裕太くんすっごく背伸びたね。何センチ? 結奈ちゃん、サンタ帽似合ってるわよ。ふふ、可愛い」
私は慌ててサンタ帽を手に取った。恥ずかしい。裕太も照れ笑いを浮かべている。
「お姉さんは相変わらず綺麗ですね」
「そう? ありがとう。でも、あなた達を見て本当に十年経ったんだなあって実感してたとこ。あー年取りたくないよー」
お姉さんは笑顔で続けた。
「けど、私は今日、二人が約束を守ってここに来てくれること……ずっと楽しみに待ってたよ。だから、ほら……」
そう言いながら、彼女はタイトスカートのポケットから綺麗に折り畳まれた一枚の紙を取り出した。
「はい、どうぞ」
受け取った私は裕太と顔を見合せて、ゆっくりとその紙を広げる。
「わぁ……」
そこには十歳の私と裕太の、未来への約束の文字が並んでいた──。
それにしても……なんてヘタクソな字だ。
「で、二人は今、付き合ってるのかな~?」
お姉さんが茶化すように聞いてくる。
「いえ、残念ながらそういうのでは……」
私が笑って誤魔化そうとしてるのに、裕太は平気で言葉を被せてきた。
「おれは結奈のこと好きですよ。それだけは十年前も今も変わってないです」
そう言い切る裕太の表情を見て、改めて気付いた。
十年経っても何も変わっていない。
いつの間にか私より背が高くなって、頼りがいのある成人になったけど、裕太はあの頃の裕太のまま。
そして私も、裕太のことが好きな私のままだ──。
[完]
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