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「おっと。強い洗脳の魔法を施したのでね。儀式を邪魔しようとすると攻撃するようになっているから、気を付けたまえよ。」
セギロはどこか楽しそうに言った。
「ひょっとして、フェイマさんを憎むあまりこんなことを? でも、どうしてそうだったら、直接彼女を攻撃しないんですか? 」
ムメは恐る恐る思ったことを言った。
そうしたら、セギロは少し意外そうな顔をした。
「おや、平凡そうな子供だと思っていたが、案外鋭いじゃないか。だが、直接直接攻撃する気がないというのは大きな間違いだな。上を見なさい。」
ムメが反射的に上を見ると、よく晴れた空の上に何かが見えた。
それはじわじわと形を伴って行き、しかも増殖して行っている。
あれは矢の形をした火だろうか。
「あれは火の魔術でしょう? それをあんなに大量に空から降らせるなんて、正気の沙汰じゃないわ! 王都が火の海になる! 」
そうリェフが怒りと強い焦りを伴った声で叫んだ。
「正気かどうかなんてどうでもいいことだ。あの女もこの想像しい王都も火で焼かれたら浄化されるだろう。それでは、私はもう行くとしよう。一緒に焼かれるなんて、冗談ではないからね。」
そう言ってセギロは指を鳴らすと、一羽の鳥になり、空に浮かんだ。リェフが魔法で幾度も攻撃をしたが、その鳥はひらりひらりと躱して、すぐに遠くに行ってしまった。
すると、リェフはどこか諦めたように笑って、ムメの方を振り向いた。
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