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「ムメ、ごめんなさい。こんなことに巻き込んで。」
「し、師匠。」
ムメはこんな風に笑うリェフは初めて見た。
その所為か、それとも明らかに手詰まりと分かる状況の所為か、なんと言っていいか分からず、彼女を呼びかけることしか出来なかった。
相変わらず、彼女たちの目の前では、沢山の魔法使いたちが詠唱を続けている。もう間もなく王都に沢山の火の矢を降らせる儀式は完成するだろう。
「ねえ、私のこれからすることがどんな結果を招いても受け止めてくれる?」
「は、はい! 私は師匠の弟子ですから! 」
ムメがそう言うと、リェフは困ったように笑った。そして、魔法使いたちとムメと一緒にギリギリの所まで離れた。
「ねえ、ムメ、これから私は王都に大火事を起こさせないように頑張るわ。でも、その間にあの量の魔法使いに襲われたら堪らないわ。下手をすると、加減を間違えてスタール諸共、何十人も命を奪ってしまうかも知れない。」
そこまでリェフは一気に言うと、軽く息を吐き出した。
「だから、ムメ。手伝ってあげるから、私達とあいつらの間に結界を張って、それを維持して頂戴。今まで授業では結界を張るのは成功したことがあったでしょう? 」
「わ、わかりました。じ、自信はないですけれど、やります!」
ムメは本当はそんな大役無理ですと言いたかった。スタールの解呪で結界を張った時とはわけが違う。リェフは結界を張るのは手伝ってくれるだろうが、自分だけで維持をしなくてはいけない上に、あんなに沢山の魔法使いの攻撃を耐えなくてはいけない。
でも、リェフが自分がその役をこなせると判断したからこそ、頼んできたことぐらいは十分伝わって来た。だったら、自分の判断よりも、師匠の判断を優先するのが弟子としての務めだろう。
そう思って、引き受けたのだった。
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