3.恋をしている少女の襲来

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 結局、依頼人の少女はリェフにほんの数日だけ好きな人と一緒にいる夢を見られる魔法を掛けてもらって帰っていった。 「ああ、無理して優しい女ぶったら疲れちゃったわ。」 リェフは猫みたいにぐんにゃりとした。 彼女がこんな姿を見せるのは珍しかった。 「し、師匠はすごく依頼人の女の子に優しくしてましたものね。いつもお客様にはあんな感じなんじゃないんですか?」 ムメが不思議に思って聞くと、リェフは首を振った。 「まさか。普段だったらあそこまで優しくしないわよ。もっと適当に相手をしておしまいにするわ。でも、弟子であるあなたが私に優しさとか包容力が大事だって占ったのでしょう? 」 「あ、ああ。そういえば。」 (すっかり忘れていた。そういえば、そんな占いをしたのだった。それじゃあ、師匠であるリェフが疲れているのは、自分の責任じゃないか。) そう思ってムメは悩んだ。 「それじゃ、今日は私はもう上でお酒でも飲んでゆっくりするわ。あなたも好きにしなさい。授業はまた明日ね。」 そういうと、リェフは恐らく値段の張るであろうお酒を手に持つと、2階にある自分の部屋に行ってしまったのである。 しかし、リェフは次の日になっても下に降りてこなかったのである。
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