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4.兄弟子の襲来
ムメは鼻歌を歌いながらリェフへの料理を作っていた。実は彼女は料理をすることは得意だった。
他の人に見られながら料理をするのは背中に変な汗をかく上に、手が冷たくなってくるので苦手だったが、自分1人だけの空間で料理を作るんだったら楽しくすらあった。
ひと先ず、具を細かく刻んださっぱりした味のスープを作って、今はリェフの好きな桃に似た果物を剝いていた。すると、庭の方から何か重いものが落ちたような音がした。
(ど、どうしよう。リェフさんの元愛人が嫌がらせに、なにか物を投げつけてきたとかだったら…。こ、こわい。でも、あの庭には私がお世話をした植物もいるし。)
ムメは悩んだが何か怖そうなものや人がいたら、すぐに屋敷の中に戻って鍵を閉めようと決心して庭に出て行った。
そうしたら、外に出ると庭には中学生くらいの男の子が蹲っていた。
ムメはその子供が怪我でもしているのではと思って慌てて近寄った。
「だ、大丈夫?!なにがあったの? 」
「誰だ。あんた。」
すると、その男の子はガバッと体を起こすとムメに向かってそう尋ねた。
その警戒心の滲んだ口調に怯みつつも、彼女はこう答えた。
「わ、わたしはリェフという人の弟子のムメです。」
「あいつの弟子? 聞いてないぞ。」
すると、その少年はすごい勢いでムメに詰め寄ってきた。
「あ、あの。あなたは?」
ムメはびくびくしながら尋ねると相手は少し顔を歪ませると、
「俺か。俺はあんたが言ったことが本当なら、兄弟子に当たる人間だ。」
と言ったのだった。
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