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そして、次の日の朝になった。
「師匠、体調はどうですか? って聞くまでもなさそうですね。」
ムメはガツガツと朝ご飯を食べているリェフに少しだけ呆れたように言った。
「ええ。昨日、しっかり休んだのが良かったわね。すっかり元気になったわ。
それより、これ美味しいわ。暇な時でいいからもう1回作って頂戴。」
輝くような笑顔で言われて、ムメは少し照れながら「それは全然大丈夫ですけれど。」と言った。
今日の朝ご飯は病み上がりであるリェフを気遣って、彼女が作ったのだった。
ムメは師匠の反応が意外だった。勿論、リェフは優しいところがあるから、口に合わなくても「ありがとう。美味しかったわ。」ぐらいは言ってくれると思っていた。でも、こんな風に一生懸命食べてくれるなんて思っていなかったのだ。
ちなみに、昨日は食欲がなかったのか、少な目に盛られた料理をゆっくり食べていた。そして、食べ終わるとすぐに眠ってしまったのだった。
(ひょっとしてあの喋る植物が言っていたように師匠が寂しがりやだというのは本当かもしれない。私の作る料理が師匠のなんらかの慰めになるなら、1回だけじゃなくて何回だって作ろう。)そうムメは心の中で決心した。
その時、ガンガンガンと扉を叩く音がした。
リェフとムメが玄関の扉を開けて、客を出迎えるとそこには昨日の自称兄弟子の少年が立っていたのだった。
「スタール。どうしてここに? 」
そう言ったリェフは自信満々で強引な普段の彼女とは違っていた。
少し戸惑っていてなんとなく自信がなさそうだ。
(師匠、どうしたんだろう。もし、師匠が彼と一緒にいることで辛い思いをしそうだったら、適当な嘘を言ってさっさと追い出すのも弟子としての仕事かな。幾ら陰キャでコミュ障と言っても、やる時はやらなきゃ! )
そんなムメの思考は彼の次の言葉で、完全に吹き飛ばされることになる。
「質の悪い呪いを掛けられた。このままだと俺はそう長くない内にこの世からいなくなる。」
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