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そういって、止める間もなく彼が上の服を脱ぐと、右脇腹の部分がぽっかりと欠けていた。
「ご、ごめんなさい。そんな一刻を争うような用だったなんて。」
「なんでお前が謝るんだ。具合が悪いリェフを叩き起こすわけにはいかないだろ。」
「で、でも。」
そんなムメに苛立ったようにスタールは、
「なんでそんなビクビクした態度なんだ! それでも魔女リェフの弟子なのか! 」と吐き捨てた。
「いい加減にしなさい! その呪いを解く方法を急いで調べるから、スタールは私と一緒に来なさい。ムメは表の植物に体が欠ける呪いについて何か知らないか聞いてきて。」
リェフが弟子二人にてきぱきと指示を出すと、兄弟子もそれ以上絡む気になれなかったらしく彼女に従い、ムメも表に出て行った。
彼女はふらふらと以前話をした植物の前に来ると話しかけた。
「あ、あの。今、お話できますか? 」
「おう、お嬢さんか。どうしたんだ。」
なんとなく心が落ち着くその声のおかげか、ムメは冷静に状況を説明できた。
「あの小僧がの。おめおめと体が欠ける呪いに掛けられるなんて油断したものだ。放っておけばいいのではないか。」
やけに声がトゲトゲしい。ひょっとして、彼と何かあったのだろうか。
「ほ、放っておくのはちょっと。師匠にとって大事な人なら見捨てたくないですし。これからも私が頑張ってお世話しますから! 」
流石に人の命が掛かった状況では、陰キャだコミュ障だなんて言っているわけにも行かず、ムメは一生懸命頑張って言った。
すると、その植物から長い溜息のような音が聞こえた後、解呪の方法を教えてくれたのだった。
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