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「そんなことより、ちょっと表の植物たちに水をあげてきてくれない? それから、魔女の占いの授業をするから。確か、占いが好きだったわよね? 」
「は、はい。好きです。行ってきます。」
あの魔女であるリェフと話すのは大分慣れたがそれでも消耗する。
それに比べて、植物はいい。
なんとなく癒されている気がする。
ムメはそう思った。
青に赤に虹色。様々な色の花を咲かせている植物に少しづつ水を遣る。
つやつやしている緑がなんとなく嬉しくて、へらへらと微笑んでしまう。
すると、するするとツタが腕に巻き付いてきた。
「ああ、美味しい。もっと水をおくれ。のどが渇いていたんだ。」
「あ、あの。あなたは私がお世話している…。」
どこからどう考えても、目の前から聞こえてくる声に、ムメは半分パニックになりながら話しかけた。
「ああ、君が世話をしてくれている植物さ。」
「しゃ、喋る植物…。」
ムメは思わず呻くように言った。
まさか、植物に話しかけられる日が来るとは思っていなかった。
「長く生きている植物は誰でもしゃべるんだがね。こちらに馴染めそうかい?」
「は、はい。なんだかここは楽に息ができて…。」
「そうかい。それじゃあ、リェフと縁を切らないでやってくれ。あの子は寂しがりやだから。」
寂しがりや。
その言葉にムメはぽかんと口を開けた。
(そんな印象、全然ない。一人で悠々自適に生きていけそうだ。)
そう彼女は思った。
「ムメー。いつまで植物の世話をしているのー。」
遠くからリェフの声がして、
「わ、私、もう行かなきゃ!」と言ってムメは慌てて立ち去った。
(そういえば、私は弟子なのにリェフの過去を全然知らないな。)
そんなことをムメは初めて思い至ったのだった。
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