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「ど、どうしましょう。人気占い師として、偉い人に気に入られて大きなお城とかで働くことになったりしたら。わ、私は陰キャなのでそんなキラキラした場所で息を吸ったら消えてなくなっちゃいます。」
そんなムメにリェフは邪悪にニッコリと微笑み掛けた。
そう悪魔が美しい女の姿で笑ったなら、こんな風な表情だろうという微笑だ。
「城付きの魔女? このわたしの弟子なのに、そんなちっぽけな立場に怯むなんて許さないわよ。どうせなら、この業界で2番目に腕のいい占い師を目指すぐらいの気構えでいなさい。」
「に、2番目って。そ、その1番目は? 」
ムメは動揺しながら聞き返した。
「勿論、この私よ。」
まるで寒いときには厚着をするとか、喉が渇いたら飲み物が欲しくなるとかと同じぐらいの当然のことだと感じているテンションで言われたので、ムメはひょっとしてとんでもない人に弟子入りしてしまったのではと少し考えた。
その時、二人が住んでいる屋敷のチャイムが鳴った。
「誰かしら。ここには滅多に人が来ないのに。」
急にリェフの雰囲気が冷たいものになる。
まるでおとぎ話に出てくる本物の悪い魔女みたいだ。
(ひょっとして怖い人が来るのかも知れない。
師匠が昔弄んだ男の人が復讐に来たとかだったらどうしよう。
修羅場は二人でお楽しみ下さいってちゃんと言わなきゃ…。)
ムメは内心ガタブル震えながらそんなことを考えていた。
しかし、魔女の屋敷を訪ねてきたのは、垢抜けないけれど素朴で可愛らしい女の子だった。
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