第2話 天王寺玲央がスーパーアイドルでいられる理由ー海斗Side

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「うんうん、愛月くん良いねー! 不機嫌な顔が最高だよ! さすがツンデレ担当!」 「あ、ありがとうございます……」 ツンデレ担当だからセーフだった! 「全然笑ってないけど大丈夫か? これ」 「大丈夫! 海斗は存在してるだけで可愛いから」 「お前は笑いすぎだけどな」 「海斗と二人で雑誌に載るの嬉しすぎて……かな。他のメンバーといる時はこんな顔しないよ?」 「うぜぇ!」 「海斗、デコピンは痛いよ!」 何でこんなに苦手な相手とやたら関わらなきゃいけないんだ! 「今日のラジオはなんと! 新メンバーの海斗とお届けしちゃうよ。海斗は初出演だね」 「話すのはあまり得意じゃ無いけど頑張ります」 「大丈夫。お兄さんが手取り足取り教えてあげる」 「今日も安定にキモいわ、リーダー」 グループのレギュラーのラジオ初出演はモモセとではなく玲央とだし。 事務所公式グッズの撮影も玲央との2ショットが多目。 事務所がコンビ売りしようとしてる魂胆が見え見えだ。 「愛月海斗さんです、よろしくお願いします!」 「よろしくお願いします」 極め付けは急遽決まったドラマの話だ。 玲央主演のドラマにゲスト出演だ。 しかもこいつの殺された弟役。 初出演のドラマでこの役は無茶苦茶だろ! 「海斗、ドラマでも一緒にお仕事出来て嬉しいなぁ」 「またお前と仕事かよ。もう顔見飽きたわ」 「やっぱり塩対応!」 台詞はしっかり頭に入れたけど、棒読みな演技しか出来なさそうだな。 初めてだからめちゃめちゃ上手くはなくても違和感を持たせない演技はしたい。 「兄さん……兄さんに話したい事があるんだ。今夜二人で会えるかな?」 台詞は覚えられる程しかない。 だけど…… 「カット! 愛月くん、表情が足りないよ! もっと緊迫感ある顔して!」 「は、はい」 1シーンだけで何10テイクも重ねるとは思わなかった。 「愛月くん、台詞に気持ちこもってないよ!」 「も、もう一度お願いします……」 「はぁ、じゃあもう一回」 芝居経験0で台詞が少ない役でもちゃんとしたものを求められるんだな。 マシな演技をと思ったけど、マシな演技すらなかなか出来ない。 何とか30テイク程で監督が納得した。
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