みんな、均衡を崩さないでくれ

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赤い小さなひと粒。 とってもシンプルなピアスが片方だけ、枕の下に潜んでいた。 「こんなところにも……」 それをつまみ上げ、部屋のあかりに透かすようにしてまじまじと見る。 つい先日、可愛いと褒めたばかりの代物だったので俺の記憶にも残っていた。 チェストにしまっておいたジュエリーボックスを取り出し、蓋を開けて無造作に入れた。 金、銀、赤、青、紫、黄緑、緑。 花に星。チェーンが付いたもの。 俺が普段着けているピアスは入っていない。 全部、この部屋に来た女たちの忘れ物だ。 忘れ物と言うより、俺を試すための、仕掛けられた地雷に近いものだったのかもしれない。 キャッチが付いたままの片方だけのピアスは、明らかに彼女たちが仕掛けていった物だろう。 誰か他の女に見つかってトラブルになればいいのに。 そんな呪いがかかってそうだ。 ある意味、このボックスは『パンドラの箱』かもしれない。
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