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「七菜、健二君が冬休み、帰ってくるらしいわよ」
母がそう言ったのはクリスマスの一週間前だった。
健二は私の家の隣に住んでいた幼馴染だ。私と同じ年で幼稚園も小学校も一緒だった。幼稚園から小学校低学年までは一緒に遊んでいたが、3年生になると私は女子同士で遊ぶことのほうが楽しくなった。健二も男子と遊ぶことが多くなっていた。
健二が引っ越したのは小学校6年生の春休みだ。健二の父の仕事の都合だった。健二の祖母と祖父は一緒に引っ越ししないことになったらしい。
「健二君、帰ってくるの」
母の一言に、目を輝かせたのは小学生の弟だった。健二は私と遊ばなくなっても弟とは仲が良く、家でゲームをして遊んでいた。
「健二君と遊ぶのは良いけど、宿題はちゃんとしなさいよ」
わかってるよ、と言いつつ弟は、健二と遊ぶゲームの話を私にしはじめた。
健二が帰ってくることに対して私はあまり嬉しさを感じることはなかった。小学校高学年になるとあまり話さなくなっていたし、学年が上がるにつれて健二は私のことを避けているような感じがした。女子と仲が良いとからかわれると思っていたのだろう。その気持ちはなんとなくわかったので、寂しいとは思わなかった。
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