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第12話 二度目のあやまち *
いつの間にか、榛名が下半身に身に付けていたものは全て剥ぎ取られていた。
「あっ……あっ……!」
「気持ちいいかい? 自分で俺の足に擦り付けるのは」
霧咲が榛名の足を割って上に乗ってきたため、ちょうど榛名自身は霧咲の
太ももに当たり、無意識に擦りつけていたのだった。
そんな榛名の煽情的な行動に煽られた霧咲は、膝で榛名の勃起している肉棒をグリグリと刺激してあげた。
「 やぁっ! ソコぐりぐりしたらダメえぇ……!」
「さっき自分でしていたじゃないか」
榛名は涙目で霧咲を睨んだ。
そんな顔をしても、ますます霧咲を煽るばかりだと榛名は気付かない。
「そんなに我慢できないの? まだコッチも触ってないのに」
「ひぁっ!?」
撫でるようにシャツの中に手を入れられて、二つの飾りをギュッとつねられて思わず大きな声が出た。
そして霧咲はまた膝を使って、再度榛名の股間を強めに攻め立てた。
「あっあっ、ダメ、だめぇ、出ちゃう……!」
「もう? いい大人なのに射精も我慢できないのか? アキ」
「だって! 貴方が強く擦るからっ……! あンっ!」
「しょうがないな……じゃあ一度イキなさい」
目を開けたら、霧咲の余裕な顔しか見えない。
悔しいけれど、抗うことは出来なかった。
そして、右の乳首をクリクリと弄くっていた手が下半身に降りてきて、急激に上下にしごかれた。
それに加えて親指で鈴口をグチュグチュと擦られて、榛名は堪らず叫んだ。
「だめ! だめぇぇ! イクーッ!!」
腰をくねらせながら、榛名は霧咲の手に白濁液を吐き出した。
「ふふっ、相変わらずイク時の顔も可愛いね……アキ」
「はぁ……っ、はぁ……っ」
達して脱力していたら「万歳して」と言われ、シャツを脱がされた。
そして霧咲は榛名の体のあちこちにチュ、チュ、と撫でるようなキスを落としていく。
(なんで……酒もそんなに入ってないのに)
身体が熱くてたまらない。
恥ずかしいけど、見て欲しい。自分が感じているところを。
触れてほしい。自分でも触れることのできない、奥の奥まで。
他の誰でもない、霧咲に……。
「あっ……」
榛名には先程から気にしていることがあった。
顔を近付けてきた霧咲がもう一度濃厚なキスをしてきそうだと予想し、両手でばっと口を抑えた。
「アキ……なんの真似かな?」
「に、においが……」
「え?」
予想外のことを言われ、霧咲はキョトンとして榛名に聞き返した。
「俺、さっきビールと餃子いっぱい食べたからその……臭いんで……」
「なんだ、そんなこと」
霧咲は口を抑えていた榛名の手を優しくほどくと、榛名の予想通り濃厚なキスをしてきた。
「はむ……っ! んっ……チュ、チュ、……チュプッ!」
しかし今度は榛名も自然に口を開けて、霧咲の舌を迎え入れていた。
においが気になると言ったわりには全く抵抗しない榛名を見て霧咲は内心笑ったが、ならば遠慮なく、と思いきりその舌を吸って味わった。
「ヂュルルルッ、ヂュッ、チュパッ! ……ふ、そんなの俺だって食べたんだから気にならないよ。コーヒーも飲んだし。それよりアキ、君は明日遅番らしいね」
「はぁっ……え?」
確かに榛名の明日の勤務は夜勤だ。
しかし誰に榛名のスケジュールを聞いたのだろう。
「師長さんに聞いたよ。家を出るのは昼過ぎでいいんだろう? だからまたこの間みたいに、頭がバカになるくらい気持ちいいセックスしようね」
「あっ!? ちょ、あんっ」
霧咲の頭が下がり鎖骨をツウッと舐めると、左の突起をパクンとくわえられた。そのまま、舌で弾かれるように激しくレロレロと舐められる。
それはあの夜に覚えた、それまで榛名自身も知らなかった自分の性感帯だった。
「ひあっ! あっ、あんっ!」
「アキ、ここ舐められるの好きだよね、今まで彼女にもされてこんな風に喜んでたの?」
「そ、そんなわけない~……ンンッ!?」
霧咲は榛名の左の突起全体を口に含み、ヂュウウと思い切り吸い付いた。
あまりの強い刺激に思わず腰が浮いてしまう。
「んぁあぁっ!! や、はげし……!」
「ヂュ、チュパッ! ──じゃあ、俺が初めてなんだ。嬉しいな」
「……っ」
榛名が霧咲に初めてされたのは、何もそこだけじゃない。
トロトロに溶かされるような濃厚なキス。
同じ男だから分かるのか、感じるところを的確に攻めてくる手。
後ろへの愛撫と挿入。──何もかも霧咲が初めてだった。
「そのうち、胸だけでもイケるようになろうね」
「んんっ」
──どうして俺はこのひとに逆らわないんだろう。
榛名は霧咲が促すままに行動している。
ただ快楽に弱いだけなのか、それとも……
その答えを、榛名は知りたくなかった。
榛名の上で霧咲も服を脱ぎ、お互いに全裸になる。とても40前とは思えない、ほどよく筋肉のついた霧咲の逞しい身体に榛名は目を奪われた。
霧咲はそんな榛名に微笑みながら、ゆっくりと身体を倒してきて榛名を強く抱きしめた。
ドキン、ドキン、ドキン、ドキン……
自分の心臓の鼓動がうるさい。
バレたらまた、からかわれるのだろうか。
こんなことをからかわれるのは嫌だ……。
(意地悪をしないで欲しい……)
そう心の中で思い、榛名も霧咲の背中にそっと手を回して、小さく抱きしめ返した。
そんな榛名の想いが通じたのか、霧咲は優しい声で榛名に言った。
「……ほんとうに、ずっと君に会いたかった」
「………」
「今日俺に再会して、運命だって思った?」
霧咲に顔を覗き込まれて、そんなことを聞かれた。
けれど榛名はプイッとそっぽを向いて。「……運命なんてものは、ありません」
と、少し冷めた声で答えた。
今日、霧咲が榛名の前に再び現れたのは単なる偶然だ。
運命なんかじゃない、最悪の偶然。
(まさかよりによって、職場なんかで再会するなんて……)
それなのに、どうして自分はこんなに霧咲を求めているのだろう。
榛名はなんだかたまらない気持ちになって、霧咲を見た。
なんだかまた、キスをしてほしくなった。
霧咲は優しい眼差しで、くるくると変わる榛名の表情を見つめていた。
そして、榛名が望む通りにキスをしてくれた。
「ンッ……チュッ、チュッ」
「チュプ……ねえアキ、俺を思い出して一人でシてた?」
「は?」
「ここ、一人で慰めてた?」
「ッや、」
霧咲の指が、榛名の後孔へと触れた。
「ねえ、教えて」
「……ゆ、指を少し入れるくらい……ソコは自分でシても、別に気持ちよくなかったから……」
「そうなんだ、あの時はあんなに気持ちよさそうにしてたのにね」
「……っ」
返す言葉がなくて、榛名は黙り込んだ。
霧咲に言ったことは本当で、自分で後ろを触っても違和感と痛みの方が大きくて、別に気持ちよくなかったのだ。
だから触っていたのは主に前だけだった。
先ほど榛名の出した精液で濡れているとはいえ、指が入るほどのぬめりはない。
男同士の性交で使う潤滑剤なんて榛名の部屋には置いていないし、まさか、ローションなしでするつもりなのだろうか。
榛名は不安な顔で霧咲を見た。
榛名の視線に気がついたのか、霧咲は反対の手でそっと榛名の頬を撫でた。
「そんなに不安そうな顔しないで。君が痛がるようなことはしないから」
「でも俺、ローションとか持ってないし」
「俺が持ってる。ローションじゃなくてゼリーだけどね。君もよく知ってるやつだ」
「もしかして、キシロ……?
「ご名答」
それは医療現場ではよく用いられる、表面麻酔薬だった。
主に尿道にカテーテルを挿入する時や、鼻から経管栄養のチューブを入れる時などに使用する。
そんな身近でよく使うものを(透析室でも穿刺する前に麻酔薬として塗ることもある)セックスのために使うことになるなんて、榛名は思ってもみなかった。
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