第12話 二度目のあやまち *

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すぐにゼリーを取りに行くのかと思ったら、霧咲は榛名の足をM字に広げると、おもむろに頭をまたぐらに突っ込んだ。 「アキ、力を抜いて、俺に身を委ねて……」 「ひっ!? やあっ! そんなところ舐めちゃやだぁ……霧咲さ……霧咲先生!」 霧咲は榛名のヒクついている秘孔に口づけ、そのまま激しく舌で愛撫し始めた。 「ヂュッ! ヂュルル、チュプッ……強情だなアキ、まだ俺を先生って呼ぶの? まぁ、いいけど」 「ひあ、ああっ、だめ、いや、だめぇ」 霧咲の長い舌で秘孔の浅いところを突かれ、舐められながら、自身や袋の方まで手でやわやわと揉みしだかれる 。 そんなことをされたら敏感な榛名はたまらず、一度出したのにまた達しそうになっていた。 しかし、さっき『大人のくせに我慢出来ないのか』と言われたことが頭の片隅に残っており、なんとかイカないようにシーツを握りしめて耐えていた。 「はあっはあっ……ふぅ……っンンッ」 「──そろそろイイかな。じゃ、ちょっと待っててね」 そう言って霧咲は持ち上げていた榛名の足を降ろすと、ベッドから離れた。 再び霧咲が戻ってきたとき、榛名はだらしなく足を開いたままで、今にも達しそうなガチガチの男根はダラダラと涎を垂らしていた。  その下に見える秘孔はまだ浅いところしか愛撫されていないのにも関わらず、ヒクヒクと疼いており、早くナカに挿れてほしいと自ら霧咲に訴えているようだった。 「アキ……君のここ、いやらしすぎるよ。まさか俺と会わなかった間に彼氏を作ったりしてなかっただろうね?」 「そ、そんなの作るわけ……ひあぁっ!」 言いながら、霧咲はゼリーを榛名の孔に塗り、つぷりと指を1本突っ込んだ。それだけで榛名はまた達しそうになる。 あの日、自分を暴いた霧咲の指の太さ、長さを思い出してたまらない気持ちになった。 それに気付いているのか気付いていないのか、霧咲は指を根本まで突っ込み、前立腺を探るためにグニグニとナカを刺激してきた。 「あっ! あっ! あんっ! ダメぇっ!」 「うーん、本当に? こんないやらしい身体を一人で持て余して、我慢できていたの?」 「だって俺、ゲイじゃなっ……! ココに入れられたのも、あの時が初めてだし……っ!──ひあああっ!? ソコッ、だめぇ!」 「此処だね、わかった」 「んああッ! 強くおさないでぇ……! いく、イクぅッ、!!」 集中的に前立腺ばかりを刺激されて、榛名はあっという間に達していた。 「ハァ……ッあ、あん、んぁあ……」 精液だけでなく涙や涎もだらしなく垂れ流していたが、前立腺のあまりの気持ちよさに酔いしれ、それをぬぐう気にもなれなかった。 「アキ……君はゲイだよ」 突然、耳元で霧咲にそんなことを囁かれた。榛名は目線を霧咲に向けることで、その言葉に反応する。霧咲は続けた。 「君はいままで本気で女性を愛したことが一度も無いだろう。この間話を聞いていて、それは分かったよ」 「ち、ちが……おれは、ゲイなんかじゃ」 「そう思い込みたければ思ってればいい。けど身体は正直だからな。もう後ろだけでイケるなんて、君は素質があるどころじゃないよ?」 「ッいあぁ!」 グチュリと卑猥な水音を立てて一気に指を引き抜かれ、さみしくなった榛名のソコに指よりも質量のある熱いものが宛がわれた。  考えるまでもなく、それは榛名がずっと欲していた霧咲の剛直だった。 霧咲は膝立ちになり、仰向けの榛名の両足を持ちあげて丸見えになった秘孔に先端をゴリゴリと擦り付けている。「ひッ……」  榛名のソコはひくひくと収縮を繰り返し、自ら霧咲を胎内に取り込もうとしているようだった。 霧咲はそんな榛名のいやらしい穴を見て、ゴクリと生唾を飲み込む。 「君は、自ら俺を求めているんだよ」 「そ、そんなの、ありえない……っ」 「わかりやすい嘘だね。 この間みたいにコレで奥をめちゃくちゃに突かれて、ブッ飛びそうなくらい気持ちいいことをされたいんだろ? アキ、正直に言いなさい。そしたら挿れてあげるよ」 「いや……!」  榛名は混乱していた。  身体はこんなにも──自分から腰を動かして霧咲の肉棒にグリグリと擦り付け、ナカに取り込もうとしているくらいに──霧咲を欲しがっているのに、心がついていかない。  初恋を諦めたあの日から、そんなのは普通じゃないと思って女の子を好きになる努力をしてきた。  結局その努力はいくら続けても霧咲の言う通り、本物の愛に代わることはなかった。  それでも、男が好きじゃない、好きじゃないと言い聞かせてきた28年間の努力を、簡単に否定はできない。──けれど。 いま目の前で榛名に与えられようとしている快楽は、そんな榛名の28年間を簡単に否定してしまえるくらい、魅力的だった。  快楽に弱すぎる自分が憎らしい。  でも、快楽を与えてくれるのが誰でもいいわけじゃない。 霧咲だから。 あの日出逢ったのが、霧咲だったから。 (……運命の人なんかじゃないのに……) 「お、ねがい……挿れて……」 「何をお願いしてるの? ちゃんと何処に何が欲しいのかを丁寧に言ってごらん」  グリッ 「んぁッ!」 霧咲は、カリの部分だけを榛名のナカにぐっと押し込んだ。榛名の両足が空を蹴るように跳ね上がる。 「あ……あぅう……っ」 たったそれだけで、榛名の理性は簡単に崩壊した。  もう霧咲に与えられる快楽のことしか頭に無かった。 「アキ。ちゃんと自分の口で言うんだ」 「……き……霧咲さんの硬くて太いペ、ペニスを、俺のお尻に挿れてくださぃっ……!」  自分が言えと言ったのだが、先ほどまであんなに嫌がっていた癖に、少し挿れただけで急にいやらしいことを口にした榛名に霧咲は意地の悪い笑みを浮かべた。  快楽に弱すぎる榛名が少し心配にもなったのだが……けど今は、そんなことはどうでもいい。 「挿れるだけでいいのかな? 他にして欲しいことはないの」 「つ、突いて……! 俺のナカのきもちいいとこ、いっぱい突いてほしいです……っ!」 「……よく言えました」 ズブブブ……! 「ひあぁっ! あっ、あーっ! ああああぁ」 霧咲自身が榛名のナカに突き進んでくる。途中で止まらずに、一気に根本まで。  榛名は無意識に霧咲をきゅうきゅうと締め付けていた。  一か月ぶりに与えられるその快楽を、眩暈がしそうなほどに感じて。 「アキ、君のナカはすごくきついのに熱くてトロトロで気持ちいいよ……っ!」 「はぁっ! はぁっ! あ、あうぅ……おれも、きもちいい……っ! きりさきさんのちんぽ、気持ちいいよお」 自身を全て挿入したあと、霧咲は一旦榛名の脚を下ろしてそのまま上から覆い被さるように抱きしめた。 「アキ、」 「あんっ、あ、なにっ?」 (はやく、うごいてよぉ……) そう言いかけたが、それは霧咲の言葉によって遮られた。 「アキ……俺のものになって? いや、きみはもう俺のものだよね?」 「え……?」 「きみは俺の、運命の相手なんだ」 (……おれが、きりさきさんの……?) 「偶然きみに二度も会えるなんて、もうそれ以外考えられないよ」 (もし本当にそうなら、俺の運命のひとが霧咲さんなら……) 「好きだよ」 耳元で甘くそう囁いたあと、霧咲は再び榛名の腰を抱いて、激しい律動を開始した。 「あーっ!! あっ! あっ!」 気持ちいい気持ちいい気持ちいい。  ズチュッ!ズチュッ、ヌプッ! 「ひあっ! ァッ! あんっ!」 霧咲に触られているところ、霧咲が挿入っているところ、すべてが気持ちいい。  もっと、もっと欲しい。この男が。 「君が好きなとこは、ココだったっけ?」 「ひっ! そこはだめ、あ、アァッ!」 「ダメじゃなくてイイんだろ? 正直に言ってごらん。そうしたらもっと気持ちよくなれるよ」 (俺があの日ああなったのは、酒のせいじゃない……) 「ぁっ、あっ、……イイッ! ソコきもちイイのぉッ! きり、霧咲さん、もっと激しく突いて、めちゃくちゃにしてぇ!」 (霧咲さんのせいだ……) 「ッ可愛くおねだりできたねアキ、100点だ。お望みどおり、めちゃくちゃにしてあげる……っ!」 「ァッ、アッ、もっと、もっとぉ……ひぁ、あぁーっ!」  霧咲は腰を大きくグラインドさせ、四つん這いにさせた榛名のナカを何度も何度も強く突き上げた。  状況は違うけれど、あの日と同じように榛名は霧咲に翻弄され、声が枯れそうな程に喘がされている。 きっと、一ヶ月前も同じだった。  霧咲のせいで、榛名はおかしくなったのだ。 「好きだよ、君も俺のことが好きだよね?」 「あうっ、うっ、好きじゃない……」 「アキ、前みたいに正直に言うんだ!ほらっ」  グリグリッ! ズチュッ! バチュッ!  バチュッ!! ドスッ! グチュッ!! 「ひああぁっ! や、やぁっ! すきなんかじゃ、好きなんかじゃないからぁあ……っ!!」 けど、あの日と違ってそこだけは流されるわけにはいかない。身体の方は、言い訳できないくらい流されていても。 だって、霧咲はもうただの見知らぬ一夜の相手ではない。  『霧咲誠人』という、K大学病院の腎臓外科医だ。  素性も分かっている上に、今後は週に一度は顔を合わすことになる相手なのだから。 簡単に応えるわけにはいかない。 榛名は彼の恋人になる気はないのだ。 「強情だね……ま、今はいいか」 「あっあっあっ、アッ、イクッ!! いっちゃう! きりさきさん! きりさきさ……! ああぁぁああ……っ!!」 「ん、俺もイクよ! アキ……受け止めてくれ!」  榛名と霧咲は男同士。  トラウマになった、偏見の目。 『榛名くんって岩切くんが好きなの!?』 『げーっきもい!』 『やだー、ホモじゃん!』 (男を好きになるなんて、普通じゃない……) 『早く結婚して孫の顔見せんね!あんたは榛名家の長男やっちゃかいね!』 (俺は男なんて、好きにならない……) 「俺は、君が好きだよ」 「ンッ、チュ、チュプ……」 (キスに応えることは、できるのに……)   榛名は、しがらみを全部振り切って霧咲に正面から向き合うのが恐かった。  付き合ったところで子供もできないし、親、友達、同僚──誰にも言えず、誰にも祝福してもらえない関係。  きっと『好き』という感情だけで耐えられるようなものじゃない、と思う。 (でも、今だけだから……)  何も考えずに、この温かくて優しい腕に身を任せ、包まれていたい。  霧咲の首に腕を巻き付けて熱い舌を絡ませ合い、お互いの唾液を飲み込みながら、榛名はぼんやりとそう思った。
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