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第11話 夜にする話*
「今日お前、午後からずっとソワソワしてたな」
いつものファミレスで夕食を食べ、二宮の部屋でそれぞれ入浴まで済ませたあと。
二人ベッドに並んで腰掛けて、そのままセックスに突入するのかと思いきや──二宮は堂島の耳たぶをフニフニと触りながら、からかうようにそんなことを言った。
「なッ……! だ、だって、先輩が今夜抱くとか直接的なこと言うからっしょ!? 意識しない方が無理だっての……」
「ハハッ。見た目はチャラいくせにほんっとかわいいよな、おまえ」
「……っ」
どこからどう見ても、誰が見ても男の自分にためらいもなく可愛いなんて言いきるのは、きっと世界中探してもこの人しかいないだろう。
絶対に目が悪い……でなければ、頭が悪いに違いない。(脳神経の、視神経的な部分だ)
それでも、そんな言葉にひどく喜んでしまう自分だってきっと色んなところがおかしくなっている。
「ムカつく……」
「なんだよ、好きなくせに」
「どっちがだよ」
可愛いと言われるのが好きなのか、それとも……
「そりゃあ……俺が、だろ?」
二宮に言われるのなら、なんだって……
「悔しいけど、そうッスね……」
「かわい」
「もう黙れって、っあ……!」
グジュッと、耳の中に舌を入れられた。
ほじくるようにナカを舐められ、耳朶を甘噛みされるとすぐに甘い声が漏れる。
「──お前は今から、沢山泣けよな?」
低くて少し掠れ気味の声を直接吹き込まれただけで、イキそうになる。
「……ッ」
返事をしようと思ったが、無理だった。顔を二宮に向けた瞬間、身体ごと食べられるような甘くて激しいキスをされたから。
*
「……二宮先輩って、俺と付き合う前は普通に何人も彼女がいた人なのに、どうして女の扱いがヘタなんですかね?」
一度目のセックスを終えたあと、冷蔵庫を開けてペットボトルの水を飲んでいる二宮の背中に堂島はそう言い放った。
「おい、その言い方は誤解を招くからやめろ。俺は同時に何人もの女と付き合ったことはねえよ」
「言葉のあやってやつですよ。付き合ってもすぐフラれてたのはなんとなーくわかりますけど、別に女性が苦手なわけではないんでしょ? 前に山本主任とも普通に話してたし……」
バレンタインにあった合コンで、二宮が自分から三階病棟看護師主任の山本に乗り換えたと勘違いして勝手に嫉妬して号泣したのは、まだまだ記憶に新しい。
あの時の自分の行動を思い出すと少し恥ずかしいが、その後二宮がとても優しく抱いて誤解を解いてくれたので、悪い思い出ではない。
山本のおかげで、自分と二宮の気持ちを再確認出来たことだし──
「そりゃあ職場の人とは普通に話すよ。でも彼女となるとなー、かゆいところに手が届かないっつーか……まあ要するに『察する』ってのが苦手だからな、俺は」
「あ~、めんどいっすよねえ『察し』!」
「思ってることと真逆のことを言うのは勘弁してほしいよな」
「それが女性ってヤツなんですよ。口では来ないで! って突き離すようなことを言ってても、ほんとは抱きしめてほしいっていうね」
「そんなん分かるかよ。俺はお前みたいにわかりやすいヤツの方がいい」
ストレートにお前がいいと言われて、堂島は少し顔が赤くなった。
「……まあ、俺は男っすからねぇ……でも俺も女だったら同じように面倒くせぇやつになってたと思いますよ。あーでもそしたら二宮先輩に気に入られなかっただろーし、男で良かったな〜」
「やけに素直じゃねぇか。かわいいヤツめ」
二宮はペットボトルの水を持参して、ニヤニヤしながらベッドに腰掛けた。
ちなみにまだ二人とも全裸だ。
「ちょ、さっきの仕返しのつもりなんスけど……照れろよ!」
「てめーで言って照れてたら世話ねぇな。あーもう可愛い。もっかい抱く」
言いながら、二宮は堂島にキスをした。
直前に水を飲んでいたので、二宮の唇は冷たくて濡れている。
「ンッ、せ、先輩、明日夜勤でしょ……?」
「夜勤だから別に何回シてもいいだろ」
「はぁ、年上のくせに俺より回復早ぇんだから、もぉ……あっ」
何も無い胸を揉まれ、前よりも少し大きくなった乳首をコリコリといやらしい手つきで弄られると、自分もすぐにまた勃起した。
二宮のモノはとうに復活していて、グリグリと身体に擦り付けられ、その存在を主張されている。
「お前とは鍛え方が違ぇんだよ」
「何アスリートみたいなこと言ってんスか……! あ、ぁンッ……」
きっと二宮は音楽じゃなくて何かスポーツをやっていたとしても、そのストイックさでいいところまでいっていたかもしれない。
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