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冬の乾燥した風がふわりとした赤毛をなびかせる。金色の波模様が煌めくストールに顔を埋めながら、赤毛の持ち主であるスワンが隣を歩く自分より小柄な少年と青年の間のような見た目の同行者に声を掛ける。
「寒いねぇ。あったかいもの、飲みたいなぁ。ホットレモネードもいいし、生クリームたっぷりのココアもいいよね。あ、シナモンを効かせたワインっていう手もある」
すらりとした長身の身にお気に入りのヒール付きのブーツを履いているため、カツカツと音を響かせながら歩くだけで目を惹く。
数人が振り返っていることなどスワンは気にも止めない様子で、飲みたい飲み物の名前を片っ端から挙げてはきゃらきゃらと笑っている。
まるで昔ながらの執事のような格好をさせられている同行者のレオはそれには答えず、小さく溜息を吐いてみせた。
「……これから仕事なんだから、もっとシャキッとしろよ」
「えー、今からする仕事はそうやって畏まらない方が上手くいくんじゃないかなって、僕は思うんだけど?」
「限度ある、限度が」
レオにじとっと見つめられ、マシュマロとチョコレートを乗せた焼き立てのマフィンが食べたいという言葉はさすがのスワンも呑み込まざるを得なかった。
「わかったよぉ、真面目なご主人様になればいいんでしょ?」
わかったって、歌うように言いながら何を入れられるのかわからないほど小さくて装飾の方が重そうなバッグの中からメガネを取り出す。
よし、とメガネを掛けながら真っ直ぐ見通せるように位置を調節する。メガネからは小さな宝石を模した飾りが散りばめられたチェーンが垂れ下がっていて、「それ今日の仕事に必要か?」とレオは言いたかったが気合いで呑み込んだ。
「俺はしっかり演技するから、そっちも頑張れよ」
「任せといて!」
ぺか、とウィンクをしてくるのを華麗に無視しながら「前見て歩けよ」とは無表情に言う。
「許せないのは、僕も同じだしね」
打って変わって真面目な顔にレオは口を閉じる。一見無駄に見えるくらいの煌びやかさと装飾、自分が大好きな物ばかりを身に纏っているのはスワンが自分の心を安定させようと思っている証拠だからだ。
そうしていないと怒りが表情となって出てしまいそうなのだろう。今から会うのはアンドロイドを楽しいショーとして虐げた人間なのだから。
「ああ、俺もだよ」
レオは頷きながら正しくご主人様に従うアンドロイドの外向きの顔そっくりの演技へと己を切り替えていった。
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