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息を深く吸い、溜め息のように吐き出す。五回ほどそれを繰り返して、ようやく心が落ち着いた。化粧ポーチに刻まれた百合の刺繍を指でなぞる。
弓塚秀が死んだ理由はわからない。
いい迷惑だった。別れを告げられた日、彼からはいくつも連絡が来た。
自分の事を嫌わないで欲しいという、懇願のようなメッセージ。まるで捨てた子犬に弁解をするかのような、情けない言葉。
今まで人を嫌ったことが無かったから、そんな自身を嫌悪したのかもしれない。
奏恵は彼からのメッセージを全て無視した。冷めたのは彼女も同じだった。
だが、それで自殺したのだとしても、こちらに責任などありはしない。
警察達の事情聴取は静かだったが、息が詰まった。今でもこうして、不意に思い出しては自分を責め立ててくる。
弓塚秀との出会いは、事故のような不幸だったと、奏恵は思っていた。
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