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この国の大臣は、若くして有能な男であった。
東に流行り病が起これば、すぐさま現地に飛んで患者の状態を確認し、特効薬の開発をいの一番に推し進めた。西に飢饉が起これば、国中の者に呼びかけて食料を確保し、貴族であろうと平民であろうと分け与えた。
平民出身の彼は、王宮に務める貴族から妬まれることもあった。しかし、大臣の有能さからこぼれ出た恩恵を受け続けるうちに、彼をやっかむ者はいなくなった。
この国の大臣は、王にすら意見する気概も持ち合わせていた。
数回の牢屋送りのみならず、危ういところで、断頭台に登らされるかというところまで至ったこともあった。しかし、大臣の有能さを考えれば、その命を奪うことがどれだけこの国の損失になるか分からない者はいなかった。
そういうわけで、この大臣、依然ピンピンとして生きているのである。
「ふう、今日も疲れたな。早く我が家に帰ろう…おや?」
そんな大臣だが、実は誰にも言ったことがない欠点があった。
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