わんこ小隊女隊長と騎士団長の忘れ物

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「わたしをからかいたいなら、戻ってからゆっくりつきあってやる! 任務中だ、邪魔立てするな!」 (まだばかにするなら、このまま決闘を申しこんでやるから!)  処罰覚悟のロレッタの本気はさすがに伝わったらしく、騎士の顔がひきつった。 「じょ、冗談だ。乗っていってくれ」 (最初からそう言えばいいのよ!)  と言い捨てたい気持ちをぐっとこらえ、ロレッタはさっさと厩舎から馬を引き出した。  もうずいぶん時間を取られてしまっている。 「急ぐぞ、頑張れ!」  ロレッタたちは本街道を走りはじめた。  急行軍で進むシルディスたち騎士団本隊は、夕暮れ前には王都に到着するだろう。 (その前になんとしてでも追いつかなくては!)  だが、日は容赦なく傾いていく。  そして行く手にまだ騎士団の気配はない。 「くっ……!」  馬に疲れが見える。  ドゥもセジも何も言わないが、耳に力がない。彼らも疲れてきている。  だが休憩を取っている時間はない。  ロレッタは馬の歩を緩めて息を入れさせ、ふたりの犬獣士たちも水筒を渡す。 「すまない、もう少し頑張ってくれ!」  息を荒げながらも、ドゥとセジがけなげにうなずいたそのときだった。  一足早く闇を宿した街路樹の陰から、三人の男たちが飛び出した。
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