0人が本棚に入れています
本棚に追加
「わたしをからかいたいなら、戻ってからゆっくりつきあってやる! 任務中だ、邪魔立てするな!」
(まだばかにするなら、このまま決闘を申しこんでやるから!)
処罰覚悟のロレッタの本気はさすがに伝わったらしく、騎士の顔がひきつった。
「じょ、冗談だ。乗っていってくれ」
(最初からそう言えばいいのよ!)
と言い捨てたい気持ちをぐっとこらえ、ロレッタはさっさと厩舎から馬を引き出した。
もうずいぶん時間を取られてしまっている。
「急ぐぞ、頑張れ!」
ロレッタたちは本街道を走りはじめた。
急行軍で進むシルディスたち騎士団本隊は、夕暮れ前には王都に到着するだろう。
(その前になんとしてでも追いつかなくては!)
だが、日は容赦なく傾いていく。
そして行く手にまだ騎士団の気配はない。
「くっ……!」
馬に疲れが見える。
ドゥもセジも何も言わないが、耳に力がない。彼らも疲れてきている。
だが休憩を取っている時間はない。
ロレッタは馬の歩を緩めて息を入れさせ、ふたりの犬獣士たちも水筒を渡す。
「すまない、もう少し頑張ってくれ!」
息を荒げながらも、ドゥとセジがけなげにうなずいたそのときだった。
一足早く闇を宿した街路樹の陰から、三人の男たちが飛び出した。
最初のコメントを投稿しよう!