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ロレッタの任務失敗はさぞ気持ちがいいのだろうが、だからといって、シルディスまで巻きこむような策略をしかけたことは絶対に許せない。
(シルディス団長は、わたしのことも他の騎士と分け隔てることなく見守っていてくださる。よい騎士になれ、と励ましてくださる。パヴァルだって、シルディス団長のことは尊敬していると思っていたのに――)
自分の見る目のなさが情けない。
ロレッタは馬を励まし、夕日めざして駆けた。
(だから絶対に許さない!)
夕焼けがあたりを染めはじめたころ、行く手に土煙が見えた。
あれだけの土煙は、騎士団の本隊以外にありえない。
さらに馬を急がせると、やはり騎士団の本隊がいた。
行く手のゆるやかな坂をのぼれば、もう王都の城門を臨むことができる。
「待って!」
声が届かないことは承知で、ロレッタはおもわず叫んだ。
入城準備のために、騎士団が止まった。新たに旗頭をつけるために旗竿が下ろされた。
いま、入城の旗頭がないことに気づいたところだろうか。
シルディスがどれだけ驚き、どれだけ心を痛めているだろうか――。
「……えっ」
次の瞬間、ロレッタは絶句した。
騎士団の頭上に再びひるがえった旗竿の先。
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