わんこ小隊女隊長と騎士団長の忘れ物

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 見間違えようのない入城の旗頭が、夕日を受けていっそう強くきらめいていた。        § § §  ルスカ街道の復旧作業が終わり、犬獣士小隊は二日ぶりに本部兵営に帰った。  毛並みは汚れ、それでも仕事をやり終えた達成感で満足げな部下たちを、ロレッタは見わたした。 「犬獣士小隊、整列! 皆、よくやった!」  整列した彼らを数人ずつまとめて、ロレッタは順番に抱きしめた。  犬獣人は、撫でられ抱きしめられることが褒美になる。  彼らのくりくりした目が一心にロレッタを見上げて、もふもふした尻尾が振られた。 (ああもう、ほんとかわいいんだから!)  彼らとロレッタと、どちらがご褒美をもらっているのかわからない。  ロレッタは少し苦労して、小隊長らしく凛々しい顔を作った。 「明日の朝までゆっくり休むよう、解散!」  愛らしい部下たちに命じると、ロレッタはひとり本部棟へ向かった。  パヴァルはすぐに見つかった。  というより、先方からロレッタのところへ来た様子だった。 「――これはこれは、ずいぶんと長いお散歩で」  にやにやしながら嫌味を言ってきた彼を、ロレッタはにらみつけた。 「ルスカ街道に落石があったから、道を復旧していたんだ」 「へえ。そりゃいい口実が見つかって何よりだったな。てっきり恥ずかしくて帰りたくなくなったものかと思っていたが」
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