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ロレッタは、シルディス騎士団の紋章つきのマント止めをぎゅっと握る。
犬獣士小隊長になったロレッタが授かった任務が、この脇街道警備だった。
手柄をあげようもない地味な役目と知って、がっかりした気持ちがつい顔に出たらしい。
シルディスは優しく微笑し、ロレッタの心得違いを諭した。
脇街道の平穏が保たれているのは、見回り、手をかける者がいるからこそで、誰もいなくなれば荒れ果てるのは一瞬だと。
――あらゆることはわが祖国にとって意味がある。つまらなく見える作業でも怠らぬことこそ、祖国に忠誠を誓ったわれら騎士の務めと心得てくれ。
ロレッタは深く感じ入り、反省し、それから脇街道警備にまじめに取り組んでいる。
(ネセネ街道付近は数日前に強風があったから、その被害確認を中心に――)
昨夜まとめた情報を頭のなかで反芻しながら兵舎を発った、その矢先だった。
「ロレッタ小隊長!」
傍らから急に声がかかり、ロレッタはあわてて馬を止めた。
副長ヴィエナも機敏に他の犬獣士たちを止める。
指で来るよう合図しているのは、狐獣士小隊長パヴァルだった。
年齢が近いせいか、ロレッタをばかにすることに一番熱心な、いやな相手だ。
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