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「ルスカ街道は山中の古道で抜け道がないぞ。何かあって進めなくなっていたらどうするんだ?」
「そうですね、でも兄上、最近このあたりで災害があった報告はありませんし、普通に本街道を追っても間に合うかはぎりぎりです。ルスカ街道はいい選択だと思います」
ドゥは頭毛の下からちらりとロレッタを見た。
「――行こう」
山を迂回する広い本街道から分かれ、ロレッタたちは山道へと入った。
木々の梢が頭上に覆いかぶさり、馬一頭通るのがやっとの古道だ。
数か月前に巡検したときは何ごともなく、山頂にある精霊の祠で絶景を眺めながら皆で休憩したのは、楽しい思い出になっている。
もっとも、今日は景色に目をやる暇はない。
(替え馬を頼めればいいんだけど……足を痛めさせないようにしなくちゃ)
足もとに気をつかい、難所ではロレッタも鞍を下りて馬を引く。
先頭を行くケトの耳がぴくんと動いた。
「小隊長どの、前のほうで人が集まっているようです」
寂れた古道に集団がいることは珍しい。
いやな予感がした。
やがて木々のむこうに、ケトの言ったとおり、十人近い旅人たちが見えた。
ロレッタは彼らに近づいた。
「シルディス騎士団犬獣士小隊長ロレッタだ。何があった?」
「ああ、騎士さま!」
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