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旅人たちがふりむいて、ほっとしたような表情になった。
ロレッタは彼らのむこうへ目をやり、息を呑んだ。
「これは――」
巨大な落石が狭い道を閉ざしている。
落下時になぎ倒された木々も、荒々しい柵のように落石の周囲を囲んでいる。
行く手をふさがれてしまった旅人たちが、その前で困り果てていたところだった。
(まさか!?)
パヴァルと彼が率いる狐獣士たちのにやにや顔が脳裡をよぎる。
俊敏な狐獣士なら、山腹を駆けあがってそこの岩を落とす工作くらいできるはずだ。
もしかしたらパヴァルはあえてロレッタに任務を授けて、それを失敗するように仕向けて――。
「このありさまで、困り果てておりましたが、ちょうど巡検にいらしてくださって助かりました」
旅人の声で、ロレッタははっとわれに返った。
パヴァルの真意を考えている場合ではない。
「……いや、巡検ではないんだ」
小隊がそろっていれば復旧作業もたやすいが、さすがに五人ではどうにもできない。
ロレッタの気配を察し、また犬獣士たちの人数も知って、旅人たちはあからさまにがっかりした。
落石と道のあいだに、ほんの少し隙間はある。ロレッタと、子供程度の体の犬獣士たちなら、なんとかくぐり抜けられる。
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