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だが、荷を背負った彼らはそうもいかない。
(地域の平穏を守るのが、わたしたち騎士団の務めだもの! いくら急ぎの用があるからといって、後回しにしたらそれこそ団長に恥をかかせてしまう……)
ロレッタは部下たちにふりむいた。
「トイ、ケト、ふもとの村へ戻ってルスカ街道を通行止めにして、可能なら応援を頼んで、応急復旧にあたってくれ。ペキは至急ヴィエナのもとへ行き、こちらの復旧作業を優先するよう伝えてくれ」
ドゥが片耳をぴくっと動かした。
彼に何か言われる前に、ロレッタはさらに言った。
「ドゥとセジは、ひきつづきわたしについてこい」
ロレッタは馬から下り、かさばるマントと革鎧を脱ぎ捨てた。
剣はぴったりと背につけ、平箱をかばいつつ、倒木と落石のあいだをすり抜ける。
逆むけた樹皮で頬がこすれ、岩肌の泥がそこらじゅうにこびりついた。
ひどい有様だが、身仕度をしている余裕はない。
「急ぐぞ! 替え馬を手に入れなくては――」
精霊の祠も素通りし、ロレッタたちはふもとへと下った。
分かれた脇街道が再び本街道に合流する地点に、シルディス騎士団支部の兵営がある。
替え馬を頼めればと思っていたところだ。
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