わんこ小隊女隊長と騎士団長の忘れ物

9/16
前へ
/16ページ
次へ
 だが、荷を背負った彼らはそうもいかない。 (地域の平穏を守るのが、わたしたち騎士団の務めだもの! いくら急ぎの用があるからといって、後回しにしたらそれこそ団長に恥をかかせてしまう……)  ロレッタは部下たちにふりむいた。 「トイ、ケト、ふもとの村へ戻ってルスカ街道を通行止めにして、可能なら応援を頼んで、応急復旧にあたってくれ。ペキは至急ヴィエナのもとへ行き、こちらの復旧作業を優先するよう伝えてくれ」  ドゥが片耳をぴくっと動かした。  彼に何か言われる前に、ロレッタはさらに言った。 「ドゥとセジは、ひきつづきわたしについてこい」  ロレッタは馬から下り、かさばるマントと革鎧を脱ぎ捨てた。  剣はぴったりと背につけ、平箱をかばいつつ、倒木と落石のあいだをすり抜ける。  逆むけた樹皮で頬がこすれ、岩肌の泥がそこらじゅうにこびりついた。  ひどい有様だが、身仕度をしている余裕はない。 「急ぐぞ! 替え馬を手に入れなくては――」  精霊の祠も素通りし、ロレッタたちはふもとへと下った。  分かれた脇街道が再び本街道に合流する地点に、シルディス騎士団支部の兵営がある。  替え馬を頼めればと思っていたところだ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加