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「犬獣士小隊、整列!」
早朝の兵舎前、小隊長ロレッタは部下たちにぴしっと言い渡した。
二十二歳という年齢は小隊長としては平均的だが、体力に劣る女ということで他の騎士たちからはなめられる。
しかも、父の代に騎士に叙された成り上がり家系ということで、またさらにばかにされる。
だが、そんなロレッタに、騎士団長シルディスはこうして小隊を任せてくれた。
ならば誰よりも有能な小隊長に、そしてどこよりも規律正しい小隊に。
そうなってこそ団長の恩に報いることができる、とロレッタは日々励んでいる。
「はいっ!」
部下たちは一斉に答えると、騎士団制服の裾からのぞく尻尾をぱたぱた揺らしながら整列した。
ロレッタの胸程度の高さにある彼らの頭では、頭毛のあいだから三角の耳がぴんと立っている。
体を覆う柔らかな体毛に、くりくりした目と黒い鼻――直立した中型犬といった姿の彼らこそ、ロレッタが指揮を執る犬獣士小隊の部下たちだった。
「小隊長どの、全員そろいました!」
国の東方の守りを託されたシルディス騎士団には、地元の獣人族からなる四小隊が配属されている。
力強い筋肉を持ち戦闘力に長けた、獅子獣士小隊。
巨大な体躯と分厚い毛皮を持ち防御力に長けた、熊獣士小隊。
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