ひと花咲かせて

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 僕は空を見上げた。快晴だ。  そして、上着のポケットに入れていたスマホを取り出した。  両手にスマホ。  いや。  スマホはポケットから取り出した一つだけ。  彼女が届けてくれたスマホは、スマホの形をした別のもの。 (花壇のところまでは上手くいったから、イケると思ったんだけどな)  僕は諦めて、すぐ横の公園に入った。  人は一人もいない。 「これは、そういうことか」  僕は、公園の真ん中の(ひら)けたところに、彼女が届けてくれた方のスマホ(ではないけれど)をそっと置いた。  そして一歩下がった。  最後の最後で、やはり自分に運はなかったんだな、と納得できた。  ひと呼吸おいてから、本当のスマホの、あるボタンを押した。  地面に置いたスマホ(ではないけれど)から閃光が放たれた。 「ひと花咲かせたかった・・・」  無意識につぶやいた。
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