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1組。
また1組。
誰かのクリスマスが終わっていく。
渇いたベルの音がするたびに
顔を上げてはまた俯く。
店員さんもそんな私を気遣ってか
すでに、2時間以上注文もせず居座る私に
言葉の一つもかけてこない。
彼に連絡を取ろうにも
その手段のない私に
待つ以外の選択肢はない。
「美味しかったねー。」
ガラガラガラ
椅子を引く音と共に
また1組のクリスマスが終わりを迎える。
「ねえママ。」
5歳くらいの、パパから飛行機を貰った男の子だった。
「あそこなんで…」
唐突だった。
男の子が指を刺した先は
私が座っているテーブル。
いや
違う
…
「こら、あんまり指さしちゃダメよ。でも、確かにそうね。一体どうしたのかしらね…。」
カランカラン
…
………
何、やってんだろ。
席を立ち店を出る。
やむことを忘れた雪は
私の心に重く降り積もる。
動いていない電車に期待するはずもなく
走ってきた道に足跡を付け直す。
何も持たない私が
待っていたところで何をするのだろう。
彼に逢えていたとして
何が出来たというのだろう。
そもそも
今彼は
どこにいるのだろう。
考えれば考えるほど
お店では堪えていたものが溢れ出す。
彼に逢いたい。
彼に一目逢いたい。
少しでもいい。
私はどうなってもいいから
彼に…
リンリンリンリン
あ
鈴の音。
子供の頃に聞いた
靴下をぶら下げながら聞いた
あの音。
…
眩しい。
一日中雪で曇り空だったのに
月?
太陽?
わからないけど
冷え切った身体を
私の心ごと包み込んで…
それでいて
暖かい。
リンリンリンリン
さっきより近い。
あ
空から何か降りてくる。
あれは
どこか見たことあるような
それでいて懐かしいような
トナカイ?
サンタクロース?
それとも
…
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