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叫び声が聞こえた。
その声はただ事ではないと感じさせ、声のした方へと急いで向かった。野次馬と言われればそれまでだが、体が勝手に動いていた。
声のした方に到着すると、女の子と母親らしき人物が喧嘩していた。喧嘩というには少しずれているような気もする。
女の子の腕を母親らしき人物が掴んでいて、どこかへ連れて行こうとしているようだった。その場には女の子の父親のような人物もいるが、その人はただ見ているだけだ。
ただ、この男性の表情には何か気持ちの悪いものを感じた。喧嘩ではない。どこか異様な雰囲気がある。
何か動かないと……! 理屈ではなく直感的にそう感じた。
僕は大声で叫んでいた。
「お巡りさん! こっちです! 早く来てください」
咄嗟のことでこんなセリフしか出てこなかったが、幸いにも母親と父親のような人物はどこかへ去っていった。
この女の子の両親ではないのか?
僕はすぐさま、その子の方に駆け寄った。
「どうしたの? 大丈夫だった?」
僕と同年代くらいのその子は気が抜けたのか、放心状態に近くなっていた。
周りの目もあり、僕たちはその場を去り、座れる場所に移動した。
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