とくべつ、とくべつ。

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「何でも思い通りになるって、退屈でしょ?だから、思い通りにならないこととか、もっともーっと私にしかないものが欲しいってずっと思ってたのよ!」  びしっ!と彼女は斜め左の方を指さした。そっちの並木道のむこうには、ちらっと赤い鳥居が見えている。神社を指さしているつもりらしい。 「誰も使えない魔法が使えるとか!異世界に招待されるとか!超イケメンの王子様が現れて私を愛してくれるとか……かっこいい魔法使いのお兄さんに溺愛されて守ってもらえるとか!そういう、アニメみたいなことが起きないかなって。世界を巨大怪獣が襲ってくるのも面白そう。それで、このつまんない世界を壊してくれるの」  でもってね、と彼女はぐるぐると指を動かす。 「私は選ばれた魔法少女として、怪獣と戦ってやっつけて、みんなに感謝されるの!素敵でしょう?」 「は、はぁ……」 「ていう、世界を変えるくらいの特別な一日になってほしいって、神様にお願いし続けてるわけ。お願いが叶ったら、お礼に神様にお賽銭をあげるのよ。世の中、成功報酬とかって言うでしょ?お願いを叶えてくれる前にお金なんかあげたら損じゃない。叶えてくれるまでお金を入れる必要なんかないって私は気づいたわけ。みんな馬鹿よねー」  どうしよう、どこからツッコめばいいんだこの子。僕はもはやため息も出ない。  神様をなんだと思っているのだろう。お賽銭は、叶えてくれなきゃ入れなくいいよ、なんてものではない。神様への日頃の感謝と、その気持ちを表すために入れるものだと僕は思っている。もちろん、いつもお金を入れろというわけではないし、額が大きいからいいなんてこともないとは思うが、それでも。  叶えてくれたら、成功報酬であげます、なんて。  いくらなんでも上から目線が過ぎるのではないか。  それに。 「……君が言いたいことはわかったけど。でも、毎日の生活に感謝することも大切だよ?」  彼女の願いは、少々迷惑がすぎる。 「巨大怪獣が現れて世界を壊したら、沢山の人が死ぬよ?困るよ?そんなことお願いしちゃいけない。君は自分が恵まれてることを自覚して、その生活を支えてくれてる人たちに感謝するべきだよ。君にその生活をくれた、神様にもさ」 「はあ?何でよ。お金持ちなのは私が自分でその運命に生まれついたからでしょ?沢山の人が困る?私が華麗に助けてあげるから問題ないじゃない」 「いやだから、怪獣が現れた時点でみんな迷惑なんだってば」
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