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プロローグ
「あれ? 美香、イカソーメンって全部食べちゃった?」
「ええっ、人のせいにしないでよ。一成が無意識のうちにつまでたんじゃないの?」
「そんなことないよ、楽しみに残しておいたんだから。別に怒らないからさ」
「いや、食べたって言ったら怒るもん! だけど濡れ衣だからね!」
僕は彼女の美香(仮名)とふたり、押し問答を繰り広げていました。
その様子を眺めているのは愛犬ラッシー。品種はコリーとなにがしかの混血……ひらたく言って雑種です。
痴話喧嘩なんていつものことですけれど、今日のラッシーは妙にこちらの様子を気にしています。視線がふたりの間を行ったり来たり。
「ちょっと待てよ、さっきラッシーにあげなかったっけ?」
「三本だけだって。あ、でもそれって買い物行く前の話だよ。そのときはまだたくさんあったし」
「そういえば戻ってきてからは、イカソーメン食べてないよな」
「あたしもなんだけど」
そこまで振り返って僕らはようやっと、はっとなりました。ふたりでいっぺんにラッシーを見やります。
とたん、耳がピョコンと寝ました! 意味なく尻尾を低ーい位置でフリフリさせ始めています!
「えへ、えへへ……ついひとくち食べたら止まらなくなっちゃって……」
「「ラッシー、やっぱりお前だったのかぁ~」」
「ごっ、ごめんなさいっっっ!」
ラッシーはもう逃げられないと悟ったようで、平身低頭でご主人様に媚び始めました。
ちなみに主人である僕(秋月一成)は、無類の動物好きでございます。
動物の言葉が分かるわけではないのですが、動物好きすぎてその気持ちが手に取るように分かるようになってしまいました。(そのためこの物語では、動物の気持ちが台詞として書き綴られています)
それだけではありません。出会う動物はみな、吸い寄せられるように僕と視線を合わせるのです。
どうしてだろうと、ずっと疑問に思っていたのです。
ところがある時、とある名言を知りました。それが脳内変換され、真実を明らかにしてくれました。
『動物の瞳を覗く時、動物もまたこちらの瞳を覗いているのだ』
……あっ、自分が動物をロックオンしてるせいか。
というわけで、このエッセイは今までに出会った動物たちとのてんやわんやを描いていきます。ちなみにノンフィクションを地で行くコンセプトですので、脚色はほとんどありません。
では、最初の物語のヒロインは愛犬ラッシーです!
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