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ーAー
「はい、じゃあこっちを向いて〜目線はこっちに〜。いいね〜次いこう」
いつもの監督の捉えどころのないしゃべり方が耳につく。しかし、私は必死でカメラに笑顔を向け、ポーズをとる。
「いいね〜、じゃあ次表情も変えていってみよう」
私はまた指示に従う。
「じゃあ次の衣装に着替えようか」「わかりました」
着替えのための仮設スペースに体を押し込み、なるべくきれいに衣装を脱いでいく。
「まったく、あの子は愛想がないねぇ。撮影以外では笑顔もないし。この間美和子ちゃんの撮影に行ったんだけど、笑顔で挨拶してくれるし、『みなさん大変ですよね!いつもありがとうございます』って水の差し入れまでしてくれたんですよ」
うるさい、うるさい。歳が近いからってあの子と比べないでよ。いっつも皆あの子のことばっかりで。
ずっと中にいるわけにもいかないので外に出る。監督もあんまりだ。
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