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「あ、和泉さん」
「……柘植。今はちょっと、悪い」
いつもなら、俺が駆け寄ったら嬉しそうに応じてくれてたのに。いきなり素っ気なくなった彼に、俺は動揺した。
なんで? 俺なんかマズいことやらかしちゃった?
必死で考えてみても、まったく思い至らない。どうして、どうして……?
馴れ馴れしくし過ぎたんだろうか。親切にしてくれるからつい甘え過ぎちゃったのか?
もしかしたら「新入生のくせにいい気になって」と怒らせてしまったのかもしれない。俺は自分でも謙虚さなんてないと思ってるから、それが鬱陶しがられたのかも。
反省した俺がなるベく近くに行かないようにしても、そういうときに限って和泉さんが向こうからやって来る。相変わらず優しくしてくれる先輩にホッとして俺が話し掛けると、以前と違ってあまり乗って来てくれない。
すぐに切り上げて去って行ってしまう彼に、俺は何が何だかわからなくなった。
どうしたらいいんだろう。
嫌われてはいないと思う、けどそれも和泉さんが気を遣ってくれているだけだったとしたら。
ただでさえ『絵』のことでも壁にぶち当たるどころか四方を囲まれて藻掻いてた日々。
そこに加えて、俺は和泉さんのことを考えておかしくなりそうだった。
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